みなさんこんにちは。MITBAC会員で、中小企業診断士/ITコーディネータのクロスルートコンサルティング代表)高木です。
私たちが日々、企業のIT経営支援やコンサルティングの現場に立つ中で、最も頻繁に、かつ最も曖昧に使われている言葉があります。
それは「戦略」です。
「売上を倍増させる」「DXで業務効率化する」「東北No.1を目指す」 これらは素晴らしい「目標」ですが、「戦略」ではありません。
USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)をV字回復させた伝説のマーケター、株式会社 刀の森岡毅氏は、その著書『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』の中で、戦略を極めてシンプルに定義しています。
- 戦略とは、資源の配分を選択することである。
私たち中小企業、そして私たちが支援する地域の企業にとって、経営資源(ヒト・モノ・カネ・時間・情報・IT)は常に不足しています。だからこそ、「何をやらないか」を決め、限られた手札をどこに切るかという意思決定こそが、成否を分けるのです。
今回は、森岡氏が提唱する「良い戦略を見分ける4つの視点(4S)」を、私たちの「IT経営支援」の文脈に置き換えて考えてみたいと思います。
1. Selective(選んでいるか)
多くの企業が陥りがちなのが、全方位外交です。「あれも大事、これも大事」と全ての業務課題に少しずつIT予算をばら撒いていませんか?
【USJの事例】 森岡氏は「映画へのこだわり」を捨て、「世界最高のエンターテイメント(アニメやゲーム含む)」へとターゲットを選び直しました。
【IT経営の現場では】 「業務全てをシステム化したい」という要望に対し、「最も利益に直結する業務(あるいはボトルネック)はどこか?」を問いかけ、勇気を持って投資領域を絞り込むこと。これが最初のステップです。
2. Sufficient(十分であるか)
絞り込んだ領域に対し、成果が出るまで十分なリソースを投下できているでしょうか。
【USJの事例】 年間売上の半分以上にあたる450億円を「ハリー・ポッター」エリアに一点集中投下しました。中途半端な投資では、劇的な変化(クリティカル・マス)は起きないことを知っていたからです。
【IT経営の現場では】 「とりあえず安価なツールを入れてみた」で終わっていませんか? 業務変革を起こすなら、ツール導入だけでなく、運用ルールの策定や社員教育といった「ヒト・時間」のリソースもセットで十分に投下しなければ、DXは画餅に帰します。
3. Sustainable(継続可能か)
その戦略は、企業の体力に見合っているでしょうか。
【USJの事例】 巨額投資の間、資金をショートさせないために、低予算で話題を作れる「ハロウィーン・ホラー・ナイト(ゾンビ)」などで集客を維持し、キャッシュフローを回し続けました。
【IT経営の現場では】 導入コストだけでなく、ランニングコストや保守体制は持続可能か? 担当者が辞めたらブラックボックス化するような属人的な運用になっていないか? 私たち支援家は、企業の「数年後の姿」を見据えた提案が求められます。
4. Synchronized(自社の特徴と整合しているか)
導入するITや戦略が、その企業の強みとシンクロ(同調)しているでしょうか。
【USJの事例】 チケット値上げ(プライシング)、パーク体験の向上(プロダクト)、感情に訴えるCM(プロモーション)。これらがバラバラではなく、一つのストーリーとして噛み合っていました。
【IT経営の現場では】 「高付加価値・対面サービス」が売りの企業が、安易に「無人化・自動化」を進めて強みを消していないでしょうか? 経営理念やビジネスモデルと、IT戦略が矛盾なく整合しているか。ここを点検するのがIT経営の要諦です。
まとめ
戦略とは、願い事リストではなく「資源配分の冷徹な決断」です。
- Selective(選択できているか)
- Sufficient(リソースは十分か)
- Sustainable(継続できるか)
- Synchronized(強みと整合しているか)
私たちMITBACは、ITコーディネータや中小企業診断士などITと経営を繋ぐ専門家の集まりです。それぞれの専門領域から、この「4S」の視点で企業の健康状態をチェックし、東北の企業を「勝てる資源配分」へと導いていきましょう。
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