ホルムズ海峡封鎖が中小企業に与える衝撃と、ITコーディネータが今できること

ITCにできること

はじめに

 2026年2月28日、米国とイスラエルによるイラン攻撃をきっかけに、エネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡が事実上の封鎖状態となりました。
日本郵船や川崎汽船といった大手海運会社も通峡を停止し、それまで1日あたり120隻程度が通航していたホルムズ海峡は、3月6日時点でわずか5隻にまで激減しています。

 これは遠い中東の話ではありません。日本の中小企業経営者の皆さんにとっても、今まさに対応を迫られる現実の課題です。

なぜ日本はこれほど脆弱なのか

 日本はエネルギー調達における中東依存度が高く、輸入する原油の9割近くがホルムズ海峡を経由しています。
石油ショック以来、輸入先の多様化が叫ばれ続けましたが、現在の日本の中東依存率はなんと93%に達しています。

 問題はエネルギーだけではありません。製造業の根幹を支える化学原料「ナフサ」も深刻な影響を受けています。
日本の製油所で生産されるナフサは国内需要の3割程度しかなく、残りの7割はUAEやクウェート、カタール、韓国などからの輸入に依存しています。

 ナフサはプラスチック・合成ゴム・合成繊維・半導体材料など、あらゆる製造業の川上に位置する原料です。
化学大手の三菱ケミカルはすでに3月6日からエチレンプラントの減産対応を開始し、「原料枯渇による操業停止を避けるため」と説明しています。
 大企業でさえこの状況ですから、在庫余力の乏しい中小企業への影響はより深刻です。

日本経済・中小企業への具体的な影響

  1. コスト高騰の波
    原油価格高騰に伴いガソリン価格や物流コストなどが上昇して日本でもインフレが加速する恐れがあります。
    運送業、農業、漁業など燃料依存度の高い東北の産業が直撃を受けます。エネルギーコストの上昇は電気代・ガス代にも波及し、製造・飲食・温浴施設など幅広い業種に及びます。
  2. 原材料・部品の供給不足
    エチレン減産は数週間以内にポリエチレン・PVC・ポリスチレンなどの汎用樹脂の供給不足と価格高騰を招きます。
    包装材・建材・農業用フィルムなど、東北の製造業・農業が日常的に使う資材が入手困難になるリスクがあります。
  3. 物流の混乱
    ホルムズ海峡封鎖の影響が企業の工場操業のほか、船・バスといった公共交通機関などの事業活動に波及し始めており、重油や軽油の調達が難しくなる見通しとなっています。
    東北は物流網が経済の生命線だけに、トラック運賃の急上昇や配送遅延は中小企業の競争力を大きく損ねます。
    政府から備蓄の放出もされていますが、先行きは見えにくい状況です。
  4. スタグフレーションのリスク
    野村総合研究所は、ホルムズ海峡が長期的に完全封鎖となる最悪の事態になると、日本経済はインフレと景気悪化のスタグフレーションに陥ると予想しています。
    コストが上がる一方で売上が伸びない——中小企業にとって最も過酷な経営環境です。

ITコーディネータだからこそできる支援

 このような危機において、我々ITコーディネータはどういった価値を中小企業に提供できるのでしょうか。

  1. コスト可視化と経営判断支援
    エネルギー・原材料コストがどの製品・工程に、どれほど影響しているかを詳細に把握できている中小企業は意外と多くないかもしれません。
    ITCはERPや会計データの分析を通じて、「どこがどれだけ痛んでいるか」を経営者に見える化し、値上げ交渉・品目絞り込み・工程見直しの意思決定を支援できます。
  2. サプライチェーンリスクの棚卸しとBCP策定
    今後は一定の「冗長性」——複数調達先の確保、安全在庫の積み増し、国内代替生産能力の維持——を意識的に経営戦略に組み込む発想が求められます。
    ITCはサプライチェーン全体をデジタルマップとして整理し、どこに代替調達先が必要か、在庫の安全水準はどこかを一緒に設計できます。
    BCP(事業継続計画)の策定・更新においても、ITツールを活用した実践的な支援が可能です。

  3. 省エネ・自動化によるコスト構造の改革
    エネルギー価格が高止まりする局面では、省エネ投資・設備の自動化・リモートワーク推進が経営防衛策になります。
    補助金の活用(省エネ補助金・ものづくり補助金など)とセットで、ITCが支援の道筋を描くことができます。
  4. デジタルによる販路・調達の多様化支援
    物流コスト上昇に対応するため、EC活用による直販強化、地産地消型のビジネスモデル転換、デジタル受発注システムの導入なども有効な手段です。
    ITCはこうした変革の設計と実装を、伴走型でサポートできます。
  5. 情報収集・判断の高速化
    危機の局面では、正確な情報をいち早く掴み、迅速に判断することが生き残りを左右します。
    ITCは業界団体・行政・専門機関の情報ネットワークを活かして、中小企業に必要な情報を届けるハブ機能を果たすことができます。

おわりに

 1973年のオイルショック以来、ホルムズ海峡封鎖は「最大の懸案」として語られてきました。それが今、現実のものとなっています。

「備蓄があるから大丈夫」「すぐ収まるはず」——そう楽観するのは危険です。
ホルムズ海峡封鎖が長期化した場合、インフレ再燃とともに燃料供給不足が生産を押し下げ、世界経済のスタグフレーションリスクが高まります。

 地政学リスクはもはや「例外事象」ではなく、経営戦略に組み込むべき「定常的な変数」です。

 みちのくIT経営支援センターは、この危機を乗り越えるために、東北の中小企業の皆さんと一緒に考え、動く覚悟でいます。何かお困りのことがあれば、ぜひご相談ください。

代表理事 本田秀行

ITCにできること