今日、5月5日は世界コンピュータ将棋選手権の決勝の日です。将棋に興味関心のないかたには、なじみのないイベントだと思いますが、例年、5月3日から5日まで川崎市の産業振興会館で開催されていて今年で35回目です。一時期、コンピュータがプロ棋士に勝つか負けるかが話題になりITコーディネータ協会のカンファレンスでもコンピュータ将棋の開発者のかたに講演していただいたことがありましたが、今は、将棋番組でもAIの評価値が表示されていて、一手指すごとに評価値が逆転するのに一喜一憂したり、AIの予想手を棋士が指すかどうかをハラハラしながら見守る観戦スタイルに変わりました。
今年は、水匠(すいしょう)というソフトが優勝したのですが、その開発チームが『キーワードは「わかりやすさ」大規模言語モデルを用いた将棋初心者支援システムの提案』というアピール文書を出していましたので紹介します。
(該当の文書は、http://www2.computer-shogi.org/wcsc35/ の上部のリンク[参加チーム]をクリックして表示される参加チームの一覧から水匠チームのアピール文書のリンクをクリックすると入手できます)
研究サマリとして以下が記載されていました。
背景と課題
・将棋人気が高まっているが、初心者向けの支援は不十分。
・AI評価値は初心者の理解を助ける一方、評価値以上の情報を与えられない。
・自分で調べようと思っても名称不明で調べられない上、学習を支援する人員は不足しているため、
初心者が取り残されている。
手法と結果
・観戦者向けの理解支援:将棋知識DBとLLM(ChatGPT 4o)の活用で、人間に理解できる・納得感のある解説を生成。
・初心者向けの学習支援:段位者AIと級位者AIを戦わせ、級位者によくある失敗と理由を解説。
・多言語対応:上記システムは即座に多言語化可能。
・結果、将棋初心者の将棋学習を支援し、継続的に将棋を楽しむためのシステムを構築した。
今後の展望
・プロの将棋の中継に対してもAIによる自動解説を行うなどし、広く将棋初心者に向けて価値を提供すること。
・システム内部の知識DBの改善やLLMのチューニング等により、プロが使えるようなシステムを開発すること。
また、2.1 開発方針には、「将棋をわかりやすく。」として
(問題)難しすぎる/説明なし/疑問が残る ⇒ (解決)初心者にもわかる!/言葉でわかる!/疑問に寄り添う!
と書かれています。
まあ、将棋の話なので、世の中には、こんな動きもありますということで、この辺で。
(内山)