補助事業の要件緩和
賃金アップに伴う補助事業の要件緩和について、令和7年9月に内閣府から「最低賃金の引上げに係る支援策について」という文書が発表され、以下の補助事業で要件緩和が行われることが示された。
- 業務改善助成金
- ものづくり補助金
- IT導入補助金
- 中小企業省力化投資補助金(一般型)
特に、IT活用の分野で利用されることの多いIT導入補助金に関しては、この発表を受け、最新の公募要領が10月15日に公開され、以下の措置が講じられた。
緩和措置
令和6年10月から令和7年9月の間で3か月以上、令和7年度改定の地域別最低賃金未満で雇用していた従業員数が全従業員の30パーセント以上である場合、補助率が1/2から2/3に引き上げアップ
加点評価
交付申請の直近月における事業場内最低賃金を、令和7年7月の事業場内最低賃金+63円以上に引き上げた場合に加点される
政策的色合いが強すぎないか
賃金アップを政策として後押しするのは悪いこととは言えないが、昨今のIT導入補助金等の採択状況をみると賃金アップに関する加点が従来よりも大きくなっているようにも感じる。本来、「システム化という手段によって業務効率化や売上拡大という目的を達成し、その結果として賃金アップにつなげる」 のが理想である。しかし、現状では 手段と目的が逆転 しているような事例が散見されるのが気になるところだ。
特に、「補助金獲得」が目的で、そのための手段として「賃金アップ」を行い、肝心の日常業務に関しては業務にマッチしないソフトウェアの導入により、逆に業績悪化を後押しするのは問題外である。
良識のあるITベンダーや支援者であればこのような事態を防ぐために適切な対応を取っているはずだが、そうではないITベンダーが少なくないのも事実である。このような問題はこれまでも指摘されながら、それを抑止しようともしない募集要項にも問題がある。経済系の補助事業は、それを活用することで経済活性化につなげるべきであり、補助金を賃金アップ政策の推進手段として利用することは本来の目的を損ねる可能性がある。結果として、経済全体への波及効果よりも弊害の方が大きくなりかねない。
みちのくIT経営支援センター 理事 清野浩司