先日、イロハ順にラベルをつけるという作業をしました。イロハ順は居酒屋の下足札くらいでしか見ることがなくなりましたが、旧カナなので、ヰとヱが含まれています。(ニッカウヰスキーのヰ、ヱビスビールのヱですね。)ラベルは半角でつけることなっていて、順番につけていくと、半角にはヰとヱが、ありません。
それで思いだしたのは、最近なにかと話題のマイナンバーカードで、銀行の口座はカナで登録されているのに、戸籍には名前の読みかたが登録されていないので、本人の口座かどうかの照合が難しかったものが、法律も改正されて名前と一緒に読みかたも登録することになったので、これからは大丈夫という会見のことです。
当たり前のようにラベルは「半角」でと書いていますが、パソコンを利用していないひとには馴染みのない単語のような気もしています。銀行で振り込みを依頼するときの説明に、口座名義人(カナ)は、半角カタカナで入力してくださいと書かれているところもあるようですが、手書きで振込依頼書を書く時に半角も全角もないので、書き方のルールとして、英字の大文字、数字、記号、カタカナで、濁点は別の文字として、ヒトマス使うこと、使えない文字(・や小さいャなど)があることが、あわせて書かれていると思います。
これらは、コンピュータの性能やメモリサイズから決められた、今となっては、ある意味、制約のようなものだと思っていたのですが、異なる銀行間で間違いなくデータをやりとりするうえでは、簡単でまぎれのないルールなのでマイナンバーで本人名義かどうかの照合で使われるようになれば、これからも、残っていくのかもしれないと思い、行政システムの文字コードがどのようになっているか少し調べてみました。
行政用の「統一文字コード」は、3種類あるようです。(出典:GlyphWiki:日本の行政用の統一文字コードについて)
(1)戸籍統一文字 :法務省の戸籍システムで取り扱われている文字集合
(2)住基ネット統一文字 :住民基本台帳ネットワークで使われている文字集合
(3)登記統一文字 :戸籍統一文字を拡張した文字集合
それぞれの統一文字は、1文字を識別するための番号がつけられています。
(1)戸籍統一文字 :10進数6桁の戸籍統一文字番号
(2)住基ネット統一文字 :非公開、設計仕様はUnicodeに基づく2バイトの文字コードと住基コード独自拡張領域
(3)登記統一文字 :10進数8桁の登記統一文字番号、詳細は非公開、戸籍統一文字番号を拡張したもの
(住基ネット統一文字番号と、戸籍統一文字番号、登記統一文字番号との間に互換性はなし)
当然、これらのシステム間の文字コードの統一についての検討も進んでいて、IPAを中核とする情報基盤整備事業のうち、文字情報基盤事業は、すでに、民間移行(一般社団法人文字情報技術促進協議会)が行われた段階のようです。(政府CIOポータル 2020.8.26 文字情報基盤の民間移行 https://cio.go.jp/node/2708)
このページによると、今までに整備できているものとして、以下が挙げられています。
・国際標準化の完了
・戸籍統一文字、住民基本台帳ネットワーク文字とのマッピング
・文字情報基盤(国際標準)範囲外の登記統一文字の縮退
・戸籍副本システムでの採用
・住民基本情報システムの標準仕様案での採用
・法人名への代替文字の導入
さらに、マイナンバーに関しての記載もあります。
「また、少し方式は違いますが、マイナンバー制度導入と同時に、個人名も通知カードやマイナンバーカードの券面入力補助アプリで代替文字が導入されています。つまりは、文字情報基盤により、戸籍、住民基本台帳、商業登記、不動産登記などすべての文字を表現できるとともに、一般のスマートフォンや市販のコンピュータで扱えるJIS第4水準をシームレスにつなぎ、データ連携させる環境が揃いました。」
「少し、方式は違いますが」と書いているところが気にならないでもありませんが、この記述をみると、マイナンバーカードの漢字については、すでに国際標準化も済んでいて、戸籍統一文字、住基ネット統一文字とのマッピングも済んでいるようです。
デジタル庁のサイトに、デジタル社会推進標準ガイドライン(https://www.digital.go.jp/resources/standard_guidelines/) というものがあり、そこでは標準化に向けた資料が色々整理されて公開されています。そのなかに「文字環境導入実践ガイドブック」というものがありました。(デジタル社会推進実践ガイドブック DS-461 2022年3月31日版)
概要に「情報システム間のデータ連携やスマートフォン等による行政サービスの利用が可能となるよう、情報システム及びサービスの開発において、行政機関がその行政活動において使用する文字の取扱いを標準化するための実践ガイドブック。」
とあり、今回、気になった、ヨミガナについても、そのガイドが記述されています。
「ヨミガナの表記及び記録については、全角カタカナを使うことを推奨します。半角カタカナの使用はデータ交換に支障を生じ得るためです。また、濁音・半濁音については、濁点・半濁点を別の1文字として表記せず(例:「ス」「“」)、濁音・半濁音で1文字として表記(例:「ズ」)するべきです。」(7ページ 3)ヨミガナに関する標準的な取扱いから一部引用)
各論として、行政サービスにおけるヨミガナの取扱いやローマ字表記についての記載もありますが、引用が長くなるので割愛します。
このガイドで、ヨミガナの表記、記録は全角カタカナを使うことを推奨しますとなっているため、戸籍につくヨミガナは、多分、全角カタカナでつけて、口座カナとはマッピングを行って、変換するという方式になるのだろうと思いますが、ネット系の銀行などでは、すでに口座カナを全角カナで登録する記載になっていましたので、内部で半角カナに変換して銀行間では、データ交換しているようです。
今回、あらためて、色々とデジタル庁のサイトを検索することになりましたが、情報共有基盤としては、文字情報基盤の他に、共通語彙基盤の整備も行われています。また、デジタル社会推進標準ガイドラインは、一般のシステム構築を行うえでも有益な情報が多く、きちんと読んでおく必要があると思いました。
名前に、ゐやヰが使われているときに、ヨミガナを、どうつけるのかについては、ガイドに記載はありませんでしたが、漢字は、基本的にどう読んでもよいらしく、キラキラネームなどの影響もあって、ヨミガナをつけることにしたのだとすれば、いま時点の標準的な発音でイとつけるのかなと思います。なかには、ヰやウィやィとつけたいひともでてきそうですが、多様性を重視する流れからすると、これらも許容してローマ字よみとマッピングするとかになるのかもしれません。
シフトJISなら半角カナは1バイトなので社名を無理やり半角で登録していたのは、ついこの間のこととのような気がしています。(結局、いまどきなので、データベースの文字コードをUTF-8に変更してサイズの拡張を忘れて軒並み桁あふれさせることになるのですが、そのあたりの注意もガイドブックに書かれていました。)
(内山 健)