DXレポートの話

皆さん、こんにちは。

みちのくIT経営支援センターの齋藤秀明です。

私は現在、金融機関のITシステム部門にて企業内ITコーディネータとして仕事をしています。どうぞよろしくお願いします。

 

さて、今日はDXレポートの話をしようと思います。

 

そもそもDXとは、デジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation)の略語で、新しいデジタル技術やデータを活用して経営やビジネスモデルを変革することを指します。

 

DXレポートとは、経済産業省が民間企業のDXを推進するためにとりまとめたレポートで、これまでに以下が公表されています。

2018年9月:DXレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~

2020年12月:DXレポート2

2021年8月:DXレポート2.1(DX レポート 2 追補版)

2022年7月:DXレポート2.2

 

◇ DXレポート

2018年に公表されたDXレポートでは、DX推進の必要性とDXに取り組むか否かが企業、そして、日本全体の分かれ目になるとし、これを2025年の崖と呼び警鐘を鳴らしています。

少し内容を紹介しますと、いずれの企業も競争力の維持・強化のためにはデジタル化が必要になりますが、従来からあるITシステムが技術面の老朽化・肥大化・複雑化等の問題から高コスト構造(レガシーシステム)になっています。そのため、既存システムの運用や保守に資金や人材が割かれてしまい、結果、守りのIT投資に8割が取られ、攻めのIT投資が2割に留まっています。

これをこのまま放置すると、IT 人材不足や保守サポート終了の重なり等でシステムの刷新どころかシステムの維持自体も困難となり、企業はデジタル競争の敗者、日本全体もこれらを背景に2025 年以降、最大で12兆円/年の経済損失に繋がるとなっており、これを2025年の崖と呼んでいます。

一方、DXに取り組み、レガシーシステムが刷新でき、新たなデジタル技術を活用して新しいビジネスモデルを創出する等ができれば、企業はデジタル競争の勝者、日本経済も2030年には実質GDP130兆円の上積みができるとしています。

DX を成し遂げていくための課題は多岐にわたりますが、2025 年までにデジタル企業への変革を完了させることを目指して計画的にDX を進めるよう提唱されています。

 

〇 DXレポート2

2020年のDXレポート2では、その後も一向にDX推進が進まず、大半がDX未着手・途上企業の状況にある危機感から、DXとはシステムのみならず企業文化をも変革していくことであり、レガシー企業文化から脱却することで、本質的なDX推進に取り組むことの必要性が記されるとともに、これまで示されなかった、具体的に目指す姿やDX成功パターン等がまとめられています。

 

〇 DXレポート2.1

2021年のDXレポート2.1では、現在のユーザー企業(低コスト優先)とベンダー企業(低コストでも安定受注優先)の関係性は一見良さそうに見えますが、デジタル競争で勝ち抜いていくことが困難な低位安定の関係にあると整理し、ユーザー企業とベンダー企業の関係性の変革の必要性とこの垣根を超えた先となる目指すべきデジタル産業の姿、その中での企業のあるべき姿がまとめられています。

 

〇 DXレポート2.2

2022年のDXレポート2.2では、デジタル産業への変革に向けた具体的な方向性やアクションが提示されています。具体的には、①デジタルを省力化・効率化ではなく、収益向上にこそ活用すべきであること、②DX推進にあたって、経営者はビジョンや戦略だけではなく、行動指針を示すこと、③個社単独ではDXは困難であるため、経営者自らの価値観を外部へ発信し、同じ価値観をもつ同志を集めて、互いに変革を推進する新たな関係を構築すること等がまとめられており、これらを実現するための仕掛けとして、経営者がデジタル産業宣言を策定(DX推進の指針を宣言)することまで提唱されています。

 

経営環境の変化やコロナ禍の影響等、DXの必要性は年々増しており、いずれの企業もDX推進は必要不可欠と言えると思います。

DX関連の書籍も沢山出ていますが、経済産業省のレポートは良くまとまっていますので、DXって何? なぜ必要なの? どう進めるといいの? など、お悩みの方は一読されるのがお勧めです。

2025年の崖まで、残すところ1年半を過ぎました。適切な危機感を持って、できることを着実に進めていきたいですね。

以 上