米騒動から考える経営者に必要なこととITコーディネータにできること

 こんにちは。MITBAC 代表理事の本田です。

 2024年から2025年にかけて、日本国内で米の価格が急騰しました。
スーパーの棚から米が消え、価格は1年足らずで2倍近くになってしまっています。

 いわゆる「令和の米騒動」とも呼ばれるこの出来事は、単なる一時的なパニックにとどまらず、私たちに多くの示唆を与えてくれます。
特に経営者の視点で見れば、サプライチェーンの脆弱性や情報の扱い方といった課題が浮き彫りになり、同時に、我々ITコーディネータの役割も再確認できる事例なのではないかと思いますので、今回は、これをテーマに書いてみます。

米騒動の背景にある構造的な問題

 一見すると、2023年の猛暑による米不足(調べてみると収穫量よりも品質に難があり、精米までの歩留まりが良くなかったようです)や南海トラフ地震の臨時情報による買いだめなど、短期的な要因が米不足を招いたように思えます。しかし実際には、より深い構造的な要因があったように思えます。

 第一に、長年続いた減反政策により、日本の米生産は「需要ギリギリ」にまで抑え込まれていたこと。収穫量が少しでも揺らげば市場全体が不安定になる状況でした。

 第二に、流通の在庫がどこにどれだけあるのかを誰も正確に把握できていなかったこと。いわゆるサプライチェーン全体を見渡す「指揮者」が不在だったという状況です。

 さらに、気候変動や農家の高齢化といった中長期的リスクも、供給力を徐々に削減していったということがあると思います。

 こうした脆弱な土台の上で、消費者の買いだめや情報の錯綜が引き金となり、価格高騰が一気に進んだ。まさに「小さな揺らぎが大きな混乱に変わった」典型例といえるでしょう。
ちなみにこのように小さな揺らぎが大きな混乱を引き起こすことを実感できる「ビールゲーム」というビジネスゲームがあります。
ネットで調べればすぐに出てくると思いますが、私の会社でも研修として実施したりしますので、ご興味のある方はお問い合わせください(あ、ちょっと宣伝してしまった)。

経営者に必要な3つの視点

 この米騒動から経営者が学べることは少なくありません。ここでは特に次の3点を強調したいと思います。

1. データに基づく予測と備蓄管理

 これからの社会では、感覚や経験だけではなく、データを根拠にした需要予測が必要です。
天候データや消費動向、外部環境を取り込んだ予測モデルを活用し、在庫を戦略的に持つことが、変動の激しい時代には必須です。
特に今後はAIを活用して、より精度の高い予測ができるようになってくると思います。

2. サプライチェーンの可視化と分散化

 どこでボトルネックが起きているかをリアルタイムで把握しなければ、問題は一気に拡大します。
IoTやブロックチェーンを活用したトレーサビリティはその一助となります。
また調達先や販売経路を複数確保することで、ひとつの経路が止まっても全体が崩れない仕組みを作ることが大切です。

3. 情報に流されず本質を見極める力

 「不足しているように見える」こと自体がさらなる不足を招く。これは経営でも同じです。
SNSやメディアの情報に振り回されるのではなく、信頼できる統計や自社のデータに基づいて冷静に判断する姿勢が求められます。

ITコーディネータにできること

では、こうした課題に対してITコーディネータは何ができるのでしょうか。

  • DX推進の伴走役
    需要予測システムや在庫管理システムを導入する際、経営課題とIT技術を橋渡しし、経営者が安心して投資判断できるよう支援する

  • データ連携基盤の設計
    企業や業界を横断した在庫・流通データの可視化基盤を提案し、サプライチェーン全体の透明性を高める

  • リスクシナリオ分析の支援
    もしもの需給変動をシミュレーションし、事前の備えを経営者に提示することで、意思決定を支援する

  • 情報リテラシー強化
    社内にデータ駆動型の文化を根付かせ、フェイクや風評に流されない組織を育てるための支援を行う

 ITコーディネータは単なるシステム導入の専門家ではありません。経営とITを結びつけ、組織の経営判断を迅速にし、適切な対応ができるようにするためのお手伝いをする存在です。
今回の米騒動から学び、組織としての変革を意識したときこそが、ITコーディネータの価値が発揮されるのではないかと思います。。


 米の価格高騰は、日々の食卓を揺るがす身近な出来事でしたが、その背後には構造的な問題と情報の混乱があったのではないかと思います。
これはどの業界でも起こり得ることです。
これからの経営者に必要なのは、データを活かす力、サプライチェーン全体を見渡す力、そして本質を見極める冷静な判断力です。

 そして我々ITコーディネータは、そのためのお手伝いをするのが本来の役割です。

 米騒動を「他山の石」とし、自社や顧客企業にどのように応用できるかを考えることこそ、今求められている姿勢なのだと思っています。

 もし、今後の経営改善、経営改革などにちょっと不安がある、相談したいなどということがありましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。