中小企業のDX推進:ITコーディネータが果たすべき役割と未来への道筋

中小企業

MITBAC代表理事の本田です。

IPAから「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート」(2022年版)というレポートが発表されています。
https://www.ipa.go.jp/digital/dx-suishin/bunseki2022.html

これまでの回答傾向とは大きく異なっており、過去最多の回答企業数(3,956件)だった一方で、全体の9割以上が中小企業であり、水産・農林業や医療・福祉などといった過去には回答の無かった業種からも回答があったとのことです。
中小企業の割合を見ても、今までに比べてかなり実態にあった分析ができるようになっているのではないかと思います。

詳細は、IPAのサイトからダウンロードして見ることができるのでそちらを参照していただくと良いのですが、このレポートの分析によると以下のことが見て取れます。

中小企業のDXの現状

分析では、「経営視点指標」と「IT視点指標」に分かれているDX推進指標を0~5の6段階で評価し、現状値と目標値について調査しています。
分析の結果は中小企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の現在値の平均は1.09で、大企業の2.04より低いことが報告されています1。データ活用の重要性は浸透しているものの、データセキュリティや基盤整備が進んでいないのが現状です。この背景には、やはり人材育成や、経営トップの投資意思決定および予算配分について課題があると考えられています。

ITコーディネータの役割

では、このような状況の中、我々ITコーディネータのような支援者は、どのような役割を担っていくべきなのでしょうか?

今まで、散々言われてきたことではありますが、やはりITコーディネータは、中小企業がDXを進める上で、これまで以上に重要な支援者となるべきでしょう。
ITコーディネータがバイブルとしているプロセスガイドラインにもやらなければないことが載っていますが、実際には以下のようなことが考えられると思います。

戦略策定: 中小企業のビジネスモデルに合わせたDX戦略の策定と実行計画の立案。
セキュリティ対策: データセキュリティの強化とプライバシー保護のための対策の提案と実施。
教育・トレーニング: 従業員へのデジタルスキルの教育とトレーニングの提供。

また、中小企業のDX推進の意識付けのお手伝いをするというのも重要な役割だと思います。直接、クライアントからお金を頂いて実施する仕事の他にも、広く啓蒙活動をしていく必要もあるでしょう。

中小企業におけるDX推進の意識付けは、成功への第一歩となります。
例えば、以下のような取り組みが考えられます。

  • 情報提供: DXの重要性や具体的な取り組み方法についての情報提供。セミナーやワークショップの開催
  • 成功事例の共有: 他の中小企業の成功事例を共有し、モチベーションの向上を図る。

直接、経営者と話す機会があれば、経営層への働きかけも必要でしょう。
経営層へのDXの重要性の説明と、経営戦略としての位置づけの強化も重要なことです。

また、先程のレポートの中でも投資意思決定や予算配分等、資金面での課題も指摘されていましたが、中小企業がDX推進に取り組む際、資金調達は重要な課題となります。例えば、
国や地方自治体が提供するDX関連の助成金や補助金の情報提供と申請支援を実施している支援者も多いでしょう。

ITコーディネータ協会では以前から、金融機関との連携を進め、企業支援のための仕組みづくりをしています。

クライアントとの契約によっては、DXプロジェクトの予算計画の最適化支援などをすることもあるでしょう。必要な投資と効果のバランスを取るためのコンサルティングなどもあると思います

資金面だけではなく、当然、ICT利活用推進の支援も同時に進めていく必要があるでしょう。
そのためにもベースとなる市場分析や戦略的な方向性を決めるための助言、イノベーションを促進する組織文化醸成のためのお手伝いをする必要もあるかもしれません。
DXによるビジネスモデルの変革と持続可能な成長戦略の構築に関わっていくこともあるでしょう。

当然、ここまでで書いてきたことに留まらず、DXを進めていくためには他にも実施しなければならないことが数多くあります。

まとめ

中小企業のDX推進は、日本経済の成長にとって重要な課題です。
ITコーディネータが果たすべき役割はここまで書いてきたように、非常に多岐にわたり、戦略策定からセキュリティ対策、教育・トレーニング、技術革新の推進まで非常に多くの領域に関わってくる可能性があります。
未来への道筋を切り開くために、中小企業と支援者が一体となって取り組むことで、新たな日本経済の活力を創出することができるのではないかと思います。

大変なことではありますが、逆に言えば非常にやりがいのある活動なのではないかと感じています。

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