根拠を持った環境分析を行っているか

ここ2~3ヶ月で他の支援者が行った支援の再評価を求められる案件が続いている。
その中で気になるのは、事業者が置かれた環境分析を経験と勘で済ませ、実態と異なる状態で支援をスタートしている案件が多いということだ。

業績はなぜ悪化しているか?

A社は人口減少地域で地域名物の加工品を製造販売している。
「売上低迷しているので業績改善を図りたい」という悩みを持ち、外部の支援を受けて事業の見直しに取り組んでいたがあまり効果が出ていなかった。
A社ではPOS等の販売データを取得していなかったが近隣の観光施設もコロナ禍以降は来客数が落ちていたことから「コロナ禍による客数減少」が業績悪化の原因と判断していたようである。
A社の業務改善をフォローするにあたり、「近隣の観光施設と比べて客数の減少率が少なければ当社は健闘しているといえる」「コロナ禍では密集を避けるために田舎へ来る人が増えた例がある」という話をしたところ、「そういわれれば遠地からのお客が増加している」「キャンプ場に泊まっているという客が増えた」という話が出てきた。
そこで売上高と仕入数・棚卸数等から大まかな計算をしたところ、「客数自体はあまり減少していないこと」やコロナ前と比べて「低単価・低利益率の商品が売れている」ということが判明した。
A社の場合は新たな顧客は増えていたがその客層に適した品揃えになっていないことが業績低迷の根本的な問題であった。

支援者が反省すべきこと

支援対象事業者の事業規模が規模が小さくなると、あまりコストをかけられないこともあり経営分析が甘くなりがちである。特に、コロナ禍や人口減少、高齢化の要因明らかに発生している事象があると、深く分析することもなくそこに答えを見出しがちである。
A社の業績改善があまり進まなかった原因は、支援開始時点で課題の設定(解決すべき問題)がそもそも間違っている点にある。環境分析に大きなコストをかけるのが難しいケースがあるのは事実だが、「本当にそれで間違いないか」「他の問題が発生している可能性はないか」と自身の立てた仮説を疑い、検証する姿勢は必要である。

 

みちのくIT経営支援センター 理事 清野浩司